わらって、すきっていって。
でも、心に引っかかっていることは、もうひとつあって。
「……美夜ちゃんのことも、あるから」
本城くんは結局、美夜ちゃんとどうなったのか、なにも言ってくれなかった。だからわたしも訊かなかった。
わたしを好きだと、まっすぐな目でそう言ってくれた彼の言葉に、きっと嘘はないと思う。だからふたりのことは知らなくていいんだとも思う。
でも、やっぱり。本城くんをとらないでと言った彼女の顔が、どうしても、消えない。
「うわ。でたよ、ミヨ」
「だってさあ!」
「本城はもう『蹴りをつけた』って言ってくれたんでしょ? だったらそれでいいじゃん。なにがダメなの」
ダメだよ、全部。
彼女はたしかに本城くんを好きだった。それを知っていながら、わたし、ぬけぬけと本城くんと付き合うなんて、できないよ。
「だってわたし、美夜ちゃんの気持ち聞いてないし、自分の気持ちも伝えてないんだよ。『蹴りをつけた』って、どういうことだろって。美夜ちゃんいま、どう思ってるんだろう……って」
「はあ? だったらミヨに訊けば? 連絡先交換してるんでしょ?」
「でもさあ、それって本城くんと美夜ちゃんの問題じゃん。わたしが口出すことじゃないと思いません……?」
「思いませんね。ばっかじゃないの。そんなのどう考えてもあんことミヨの問題だよ。女どうし、恋敵どうし、バチバチにやり合って、あんこは堂々と本城をゲットしてやったらいいんだよ」
バチバチとか、ゲットとか。えっちゃんは相変わらず過激派だ。
彼女はもうほとんどなくなっているココアをもう一度吸って、ズコッと音を立てたあと、グラスをテーブルに置いた。結構な勢いだった。
「てことで、呼びな、いまここに、ミヨを」
……はい?