わらって、すきっていって。


美夜ちゃんは不機嫌そうな顔でやって来た。わたしがLINEをした20分後のことだ。思ったよりも早くて驚いた。というか、本当に来てくれるとは思っていなかったし。

車椅子をつけやすい位置のテーブルでよかった。そう思っているあいだに、彼女はちゃっかりきょうもパンケーキとパスタとドリンクを注文し終えて、そこでふんぞり返っていた。相変わらずよく食べなさる。


「――で。なんなの。これは、いったい」


しかめっ面の美夜ちゃんが、いつもより何トーンか低い声でつぶやく。

よくぞ訊いてくれた。だってそれ、わたしも訊きたいことだった。


「ねえ、誰だっけ。たしかなっちゃんの決勝のときいたよね、ポニーテールのさー」

「荻野英梨子です。同じ女に2回も自己紹介するのってすっごい嫌なんだけど」

「えー、なになに? 最初っから喧嘩腰? 美夜、全然買うよー?」


本当にやめてほしい。気の強い美人ふたりに挟まれるわたしのことも少しは考慮していただきたい。

笑顔が笑っていない。こわい。無味無臭のオレンジジュースって、たぶん生まれてはじめて飲んだ。

思った通りだ。はじめて美夜ちゃんに会ったときから、えっちゃんと美夜ちゃんは絶対に気が合わないって思っていたんだ。


「あんた性格悪そうだねえ」

「美夜もいまおんなじこと思ってたー」


そこで美夜ちゃんのアラビアータが運ばれてきた。一緒にアイスティーも。よかった。本当に喧嘩が勃発するところだった。

美夜ちゃんはきょうもウエイターさんに律儀にお礼を言って、うれしそうな顔でフォークにパスタを巻き付ける。やっぱり早い。それにやっぱり、よく食べるなあ。
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