わらって、すきっていって。
それにしても、やっぱり美夜ちゃんは大食いの早食いだ。きょうはこないだのカルボナーラよりも早かったんじゃないの。
えっちゃんも感心したように空になったお皿を眺めて、美夜ちゃんには気付かれないようにため息をついていた。
「なっちゃんは小町ちゃんが好きで、小町ちゃんもなっちゃんを好きで。悩む必要なんかどこにもないじゃん? 美夜の存在が目の上のタンコブなのはまあ分かるけどさー」
「でも、美夜ちゃん、本城くんのこと」
「うん、好きだったよ。昔はね。でもいまは違うからー」
「でも」
「ほんっとうざいなー。美夜はもう振られてるの! 小町ちゃんのことが好きだって、だから美夜とは結婚できないって、なっちゃんにはっきり言われたの! 分かる? はー、なーんで美夜にこんなこと言わせるかなー」
美夜ちゃんはイラついたようにまくしたてて、豪快にアイスティーをごくごくと飲んだ。
どうしよう、怒らせてしまったのかも。
「ご、ごめ……」
「むかつくから謝んないでくれる」
やっぱり怒っていらっしゃる。
そこで、さっきと同じウエイターさんが空になったお皿を下げにきてくれた。美夜ちゃんはやっぱりお礼を言って、それからもう一度わたしに向き直る。
でもその顔は、怒っているというよりも、あきれているみたいな感じだった。
「……違うじゃん。だからさ、小町ちゃんはなっちゃんの気持ちを受け入れて、美夜といろいろあった分まで、なっちゃんを幸せにしてあげてよね。好きなひとが自分を好きになってくれるって最高にミラクルなことだと思うもん、美夜」
まったくもって同感だ。あの後夜祭、本城くんに振られたあの夜に、両想いって奇跡なんだって身をもって知った。
そしてわたしはいま、その奇跡を手に入れているんだ。これってすごいことだ。
「――そうだよねえ、ほんとに。あたしもそう思うよ。好きなひとも自分を好きでいてくれるって、ほんと、奇跡だよねえ」
ふと、ずっと黙って聞いていたえっちゃんが口を開いた。びっくりした。まさかえっちゃんの口からこんな台詞が出るなんて。