わらって、すきっていって。
化学が担当科目の折原奏(かなで)先生。通称かなちゃんは、ちょっと抜けているけどイケメンだから、たしかに女子生徒には人気がある。
でも、えっちゃんはいつも興味なさげだったから。まさかえっちゃんがかなちゃんに恋をしているなんて、ちょっと夢にも思わなかった。
「……知らなかったでしょ。あたしがいつも青いピアスつけてるのは、折原の好きな色だからなんだよ」
「た、たしかにかなちゃん、なんか青い感じする……うん」
「告白もしたよ。もう3回くらい。全部断られたけど。ひどくない? たった10歳しか変わらないのに、『子どもとは付き合えない』ってさ。奥さんを理由にしないところがむかつくよねえ。だって、奥さんが理由ならなんとかなるかもしれないのに、年齢ってどうしようもないじゃんね」
言いながら、えっちゃんがへらりと笑う。
「でももう卒業だしさ、あたしも折原から卒業しようと思って。それにいま、野間に付き合ってほしいって言われてて、返事してない状態なんだよねー」
「ええ……なんにも聞いてなさすぎて悲しくなってきたよ、えっちゃん……」
「ごめんごめん。でもあんこはあんこで大変そうだったしさ。恋愛の話はしないほうがいいんじゃないかって思って」
わたし、そんなに頼りないのかなあ。
地面を蹴って歩きだした彼女に置いていかれないように、わたしもあわてて足を動かした。そのとき、えっちゃんの耳元で青いピアスが光って、なんだか無性に切なくなった。
「あのさ! ちーくんとかどうかなあ? 優しいしかっこいいし、面白いし、ふたり、結構仲良しだし! うん、いいと思うなあ!」
「あんたさー、ちょくちょく霧島とあたしをくっつけようとしてくる節あるけど、ホントそれだけはないからね?」
「え、そうなの」
「そりゃそうよ。あたしらはお互い完全恋愛対象外! 霧島にも訊いてみるといいよ。まあ、霧島はいいやつではあるんだけどねえ。早く彼女できるといいよねえ、ほんとに」
なんだって。もしかして、ちーくんがえっちゃんを好きだってのは、ただのわたしの勘違いだったの。
もう、恋愛ってやっぱり難しいな。いつまでたっても全然分からない。もう18歳になるのに恥ずかしいや。
いつか、わたしにもいろんなことが分かるようになる日がくるのかなあ。