わらって、すきっていって。
「どうもこうもないよ。緊張して死ぬかと思った……」
「うん。爆死しそうになってたね」
「もー! 分かってるなら助けてよー!」
えっちゃんの軽快な笑い声が鼓膜を揺らす。他人事だと思って楽しんじゃって。もう。
「ねえ、あのあとちょっと本城としゃべったんだけどさ、本城も緊張してたって」
「キンチョー?」
「『引かれてなかったかな』って言ってたよ。あんた急に帰っちゃうから心配してた」
「し、失礼なことしちゃったなってちょっと反省してます……」
「そうだねー。でもよかったね。もしかしたらこのままうまくいくかもよ?」
うーん。でも、本城くんとうまくいきたいとか、そういうのは、正直まったく考えていないんだ。
だって、きょうはじめて本城くんと話したんだよ。なのにそんなことまで考えられるわけがないよ。彼の目を見るだけでこんなに精いっぱいだというのに!
「じゃ、そんだけだからー。本城から返事くるといいね」
「な、なんで知って……」
「あんた最初に『なんだえっちゃんか』って言ったでしょうが。そんなの本城に連絡してたとしか思えないって」
「わお……」
さすがはえっちゃん。
じゃあおやすみ、と言って、彼女は一方的に電話を切ってしまった。言いたいことだけ言うと気が済んでしまうところ、最初から変わらないなあ。
画面には1分30秒と表示されていた。とても女子高生どうしの通話時間とは思えない。
でもきっと、えっちゃんは心配して電話してきてくれたんだ。本城くんの言葉を伝えるためだけに、電話してきてくれたんだ。