お嬢様になりました。
話をしている葵と東條を、気づかれない様にチラッと見た。


今までロクに学校に来なかった東條。


学校に居ようが居まいが、別にどっちでもよかった。


でも今は違う。


葵と楽しそうに話している姿を見ると、学校にくる暇があんなら仕事してろよと思う。


こいつが学校にくる様になったのは、葵の存在が大きいだろう。


いや、学校にくる理由は葵しかないだろう。


東條と話をしている時の葵の顔は、特別な顔に見える。


俺に向けた事のない顔で笑う。


葵は東條の事が好きなのかもしれない。


俺は葵にとって邪魔な存在。


そう思いながらも俺は葵を手放す気にはなれなかった。



「隆輝さん、今度のお休みのご予定は?」

「お前に教える必要ねぇだろ」

「二人でゆっくりお茶でもしましょうよ」



こいつもその他大勢と変わらない。


自分の良い様に話を進めようとする。


俺も人の事はいえねぇか。



「断る」

「そんな事仰ら……」

「全員席に着け」



タイミングよく相模が入ってきて、俺は橘から視線を逸らした。


相模のおかげで話を終わらせられた。


こいつはいくらハッキリ断ってもめげねぇからな。





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