お嬢様になりました。
今日もいつもとなんら変わりない授業が終わり、あっという間に放課後が訪れた。



「行くぞ」

「あっ、ちょっと待ってよ!! じゃあ、みんなまた明日ねっ」



葵は皆に笑って手を振りながら、俺の後ろについてきた。


廊下に出るなり俺の隣を歩く葵。


見慣れた葵の横顔。


そんな葵の横顔が、今日は少し違う様に見える。



「……クマ?」

「え?」



思わず口からそう零れ、葵は首を傾げ見上げてきた。


葵の顔をマジマジと見て、自然と眉間にシワがよった。



「お前何だよその顔」

「何だよってどういう意味よ!! 失礼な奴」

「ちげぇよ。 目の下にクマができてんぞ。 ちゃんと寝てんのかよ」



せっかく綺麗な顔してんのに、クマなんかがあったんじゃ台無しだ。



「クマなんてできてない」

「あ? どのツラ下げてそんな事ぬかしてんだよ」

「このツラ下げてよ!! 私が寝不足だろうが寝不足じゃなかろうが、隆輝には迷惑掛けてないでしょ」



可愛くねぇ奴。



「俺の婚約者だろうが。 俺に迷惑かける前に、そのみすぼらしい顔治しとけよ」

「はいはい……」



いつもならもっとガンガン言い返してくるくせに、今日はどうしたんだ?


妙に聞き分けがいいじゃねぇか。


っと言うか、何で目を合わせ様としねぇんだ?





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