お嬢様になりました。
葵の手を取ると、葵の手がビクッと震え、勢いよく手を振り払われてしまった。



「ご、ごめんッ、ビックリしちゃって……」

「…………」



最近は手をつなぐのは当たり前になっていた。


それなのに急に何なんだよ。


苛々が募りつつも、その苛つきを葵にぶつける事は出来なかった。


葵が今にも泣きそうな顔をしていたから。


なんでお前がそんな顔すんだよ。


普通逆だろうが。



「さっさと行くぞ」

「あ、うん……」



ホッとした笑みを零した葵に安心した。


だけど、いつもと様子の違う葵の様子に少しだけ違和感を覚えた。


こいつの口から話が出るまで俺は黙っていよう。


無理矢理聞き出そうとしても、喧嘩になるのがオチだ。


温室に着くと山口が笑顔で俺たちを出迎えた。


接していく内に、こいつは本当に良い奴だと思うようになった。


あの時感情任せにぶん殴っちまって、本当に悪い事をした。


葵とも友達以上の関係はねぇみてぇだし、それ以上の関係に発展する様子もねぇし、まぁ無害だな。





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