お嬢様になりました。
「今日も宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しくねっ!!」



笑って定位置である椅子に座る葵は、俺のよく知る葵だった。


さっき目を泳がせながら、泣きそうな顔をしていたのが嘘みてぇだ。


俺も椅子に腰掛けいつもの様に葵の姿を見つめた。


花は好きでもないし興味があるわけでもない。


この温室で今俺が興味を持つのは葵だけ。


葵を眺めているだけで、心が安らぐ。


時折山口と楽しそうに話している葵の姿は、リラックスしている様に見える。


でもその姿を見ても嫌な気持ちにはならない。


相手が山口だからかもしれない。


俺と山口の間にそれほど会話があるわけではないが、それでも山口の事を妙に信用している自分がいる。


俺の周りにはいないタイプだ。


まさか自分が一般生と関わりを持つ事になるとは思わなかった。


葵と出逢う前の俺だったら考えられない事だ。


葵と一緒にいると視野が広がる。


いろんな感情、世界を知れる。


初めは変化に戸惑った。


自分が自分じゃないようで気持ちが悪かった。


だけどそういう自分も有りだと思えるようになったのは、葵のお陰だろうな。






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