お嬢様になりました。
暫く観察していると、山口が手を止め微笑んだ。



「宝生院さん、ありがとうございました」

「え?」

「宝生院さんにお手伝いして頂くのはこれで最後です。 後は僕一人の作業になります」



っという事は、俺にとっても葵と過ごす最後の放課後って事か。


二人で過ごそうなんて言っても、葵は嫌がりそうだからな。



「もう、大丈夫なの?」

「はい。 今度何かお礼をさせて下さい。 お二人に」



山口は俺と葵をみて、子供みたいな笑顔を零した。


本当にこいつタメかよ?



「礼する暇があんなら、賞の一つや二つ取れよな」

「海堂君……ありがとうございます」



こいつと話してると調子が狂う。


俺がどんな嫌味を言おうと、憎まれ口を叩こうと嫌な顔一つせず受け止める。



「じゃあ、俺らは先に帰る」



葵に目を向けると、携帯を見ながら固まっていた。



「おい、どうしたんだよ」



俺の声にハッと顔を上げた葵は、慌てて携帯を鞄にしまった。



「ごめん隆輝ッ、私先帰るね!! 山口君、絵の残り頑張ってね!! 応援してるから!!」

「おいッッ!!」



葵は鞄を抱えて急いで温室から出ていってしまった。


チッ、何なんだよあいつは!!






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