お嬢様になりました。
今更こんな話をする意味があるのか?


橘の気持ちだとか転校してきた理由だとか、正直俺には関係ない。


興味もない。



「お二人は愛し合って婚約を結んだわけではないんだと、一目見て直ぐに分かったわ」

「お前には関係のない事だ」



愛し合っていない……他人にそう言われて、こんなに腹が立つとは思わなかった。


俺たちが愛し合ってるか愛し合ってねぇかなんて、こいつには一切関係ねぇ。



「関係ないわけがないでしょう!?」

「関係ねぇだろッッ!!」

「だったら私の気持ちはどうなるのよッッ!!!!」



とうとう橘の目から涙が零れ落ちた。


泣いてるくせに、迷いのない真っ直ぐとした瞳に少し戸惑った。



「隆輝さんが幸せそうな顔をしていたら、もしかしたら諦めがつくかもしれないッ、そう思ったのッ!! それなのに……貴方は切ない目で、宝生院さんの事を見ていたわ……時折辛そうな顔をしながら……っ」



切ない目?


辛そうな顔?


何だよそれ……そんな顔、した覚えなんてねぇよ。



「今だってそう……」

「…………」

「凄く辛そうで見ていられ……」

「黙れッッ!!」



ふざけんなっ!!


そんな憂いを帯びた目で俺を見てんじゃねぇよ!!


橘は微笑み、手を背中に回した。



「おまっ……な、に……してんだよ」



スーッと音がしたかと思えば、橘の肩が露わになり、ワンピースがクシャッと床に滑り落ちた。





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