お嬢様になりました。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー



葵と約束をした土曜の夕方、予定通り葵の家に到着した。


約束と言うか、一方的に俺が決めただけだ。



「海堂様、お待ちしておりました。 只今お部屋へご案内致します」



葵の専属執事に出迎えられ、俺は案内されるがまま歩いた。


俺の前を歩く執事、確か荒木とか言ったか……こいつは俺よりも葵の事を知っているだろう。



「なぁ……」

「はい、何でしょうか」

「最近葵の様子で可笑しなところはないか?」



歩きながら体を少し斜めに向け、後ろを見た荒木に尋ねた。


相変わらずの無表情だ。



「可笑しなところ、と申しますと?」

「可笑しなところっつったら、可笑しなところだよ」

「……いえ、葵お嬢様でしたら、お変わりなくお元気でございます」



一瞬考えた素振りを見せた荒木。


だが、至って普通にそう答えた。


恐らく葵の変化に気付いてるだろうし、理由も知っているだろう。


そう思いながらも、それ以上は突っ込めなかった。


葵の執事だ。


俺が何を聞いても、葵の許可がなければ口を割らないだろう。






< 289 / 360 >

この作品をシェア

pagetop