お嬢様になりました。
通された部屋は食堂だった。


家でも見慣れた広々としている食堂。


でも俺の家と違って、温もりというか、生活感が感じられた。



「いらっしゃいっ」

「あ、おう」



前から知っている葵の明るい笑顔に少し拍子抜けしてしまった。


こいつ学校ではよくわかんねぇ態度とってたくせに、マジなんだよ。



「何ボーッと突っ立ってんの? 早く入れば?」

「言われなくても入るっつーの」

「人の家なのに態度でかっ!!」

「お前の図々しさに比べれば、俺の態度なんて可愛いもんだろ」

「はぁ!? バカ言わ……」

「葵お嬢様、何かお手伝いする事はございますか?」



荒木に言葉を遮られた葵は唇を尖らせた。


何で俺が睨まれなきゃなんねぇんだよ。


途中で遮ったのは荒木だろ!!



「ううん、大丈夫です。 何かあれば呼びますね」

「畏まりました。 それでは私は一旦失礼致します」



荒木が部屋から出て行き、俺は適当に椅子に腰掛けた。


流石、宝生院会長。


家具の趣味がいい。


品と煌びやかさを漂わせながらも、落ち着く空間になってる。





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