お嬢様になりました。
「宝生院会長は?」

「お祖父ちゃんは昨日から海外に行ってるよ。 仕事半分、遊び半分だって言ってた」



屋敷には俺たちと使用人だけってことか。


邪魔される心配がなくてホッとした。



「ここだよ」



葵がドアを開け、俺の手を引き中に入る様に促した。


部屋の中は思っていたよりもシンプルで、正直意外だった。


葵のことだからガヤガヤした部屋してんのかと思った。



「マジマジ見ないでくれる? 恥ずかしいから」

「たかが部屋見られたぐらいで、何恥ずかしがってんだよ」

「たかがって何よー。 ほんっと態度でかいんだから」



ーコンコンコン。



「はぁーい」



ドアが開きくとワゴンを引きながら荒木が部屋に入ってきた。



「失礼致します。 お飲物をお持ち致しました」

「ありがとうございます。 本当に荒木さんっていつもタイミングがいいですよね」

「そうですか? そんな事はないと思うのですが……」

「だからいつも助かってます。 本当にありがとうございます」

「勿体無いお言葉でございます」



堅物執事も、葵の前ではこんなに柔らかい顔すんのか。


荒木はテーブルにティーセットをセッティングすると、部屋から出て行った。





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