お嬢様になりました。
俺の上でジタバタと暴れる葵の体を、ギュッと抱きしめた。



「冗談はやめてよね!! 離してってばぁーっ!!」



冗談でこんな事しねぇよ。


それに、そう簡単に離してたまるか。



「俺、今日誕生日」



ずっと暴れていた葵の体がピタッと動かなくなった。



「は? 嘘でしょ?」

「こんな直ぐバレる嘘ついてどうすんだよ」



俺の胸に手をつき、上半身を起こした葵と視線が絡まった。


眉尻を下げ、シュンとした表情を見せる葵。



「ごめん……知らなかった……」

「お前の事だから、俺の誕生日なんか知らねぇと思ってたよ」



別にお祝いをしてほしいわけでも、物が欲しいわけでもない。


ただ一緒にいてほしかった。


特別な日にしたかった。


思い出に残る様な誕生日、たまにはそんな誕生日を過ごしてもバチはあたらねぇよな?



「プレゼントくれよ」

「勿論!! 何がッッ!?」



葵の腕を掴み、体制を変えた。


俺の下で小さく口を開け、目を見開いている葵。


葵の手に自分の手を重ね、指を絡めた。


抵抗するように体を捩り、頬を赤く染める葵の唇に自分の唇を落とした。





< 296 / 360 >

この作品をシェア

pagetop