お嬢様になりました。
「んっ……っ……」



最初はか弱い力でもがいていた葵だったが、段々とおとなしくなっていった。


舌を絡め、角度を変える度に漏れる葵の可愛い声。


甘い吐息が俺を惑わせる。


唇を離すと、肩を上下に揺らしトロンとした目で葵が俺を見上げていた。



「な、んでっ……こん、な事すんの……?」

「プレゼント、くれるって言ったじゃねぇか」

「言ったけど……バカ……」



まだ息が整わない葵の弱々しい声は、まるで俺を煽ってるみたいだ。


葵の頬に触れると、葵の肩がピクッと動き、恥ずかしそうにそっぽを向いた。


可愛い奴。


これ以上くっついてたら、嫌がられても最後までやっちまいそうだ。


俺はベッドからおりてシャツを整えた。



「婚約者としての最初で最後のプレゼント、記念に覚えといてやるよ」

「え……? どういう意味?」



葵は体を起こし、ベッドに座ったまま困惑した顔で俺を見上げた。



「婚約解消してやる」

「何、それ……」

「なんだよ、もっと嬉しそうな顔しろよな。 念願が叶うんだぞ? なんかもうめんどくせぇから、もっと俺に従順な女探す事にしたんだよ」

「そ、そっか……良かった……やっと……これで肩の荷が下りるよ」





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