殺し屋天使




「ねぇ…」



呼びかけられて我に返れば、先を歩いていた彼が足を止めて少年を振りかえっていた。


赤い点滅ネオンを浴びて胡乱な瞳が彼に問う。




「片割れが“生きてる”事、彼等に教えてあげなくてヨカッタの?」



――――は?



「……なんやて…」




彼は肩をほぐすみたいに首を傾けた。




「だってスズキ…言ってたじゃん。」







―――なんや生死も知られたらマズイんやて。



「それってさ、誰の言い分?…でも“片割れ”のセリフなら『生かした』んじゃなきゃ、聞くタイミングもないセリフだよね。」



“居場所はおろか、生死も知られたらマズイんやて”



知られたらマズイ―――とは、探している者の言うセリフではない。




だとしたら『片割れ』のものだろうが、少年の話を聞く限り用水路に投げ込むまでの間にそんな会話をするトコロもない。




だとしたら、投げ込んだ後。




それは『片割れ』が生きている事を示唆している。




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