殺し屋天使
「…どーしてああ変な時刻ですかね……深夜アニメの放送て…」
独り事のような呟きにほんの僅かに不満らしき色を滲ませて
「お先に失礼さーす」
お疲れさっした、とまるで敬意を感じない口調で、形ばかりにぺこっと頭を下げて、一流といわれる殺し屋はペーペーのバイトの如くにそそくさと帰って行った。
男は身じろぎも忘れて茫然とその姿を見送った。
驚愕よりも以前に、たった今見た出来事がまだ理解出来なかった。
あの少年は一体何をした?
襲いかかる10の巨体。
突き出される剛腕に彼はまるで風に乗った綿毛のようにすい…と身体を揺らし、
サクリと―――
まるでリンゴに楊枝でも刺すかの如くに野太い丸太ほどもある荒くれ者の首に短剣を刺していった。
サクリ、サクリと。
短剣を抜く際の噴水のような血も意に介さず、
サクリ、サクリ―――
丁度10。