殺し屋天使



虚勢も威勢も削ぎ落されるようなユル系殺し屋を前に虚脱感に襲われそうになった男は己を叱咤し、これでもかと威厳を取り繕って用件を伝えた。


近日、シマ内に入り込んで勢力を伸ばしつつある別組織の頭の殺戮だ。


決行は一週間後。


その日、敵ボスは身内のパーティーに出席する。


一日のスケジュール、運行経路、パーティー会場の見取り…


全て念入りに調べ上げ、後はトドメを刺すだけの至でり尽くせりの仕事だ。





だが、殺し屋の口を吐いた応えは―――


「断る。」


だった。






何故だ。


念入りなお膳立てが一流の矜持を傷つけたか?


それとも敵を知り億したか―――?


訝る男に殺し屋は端然と告げた。





「その日はアニメの再放送があるんで。昔、見逃したんすよ、その回…」




………。



マヂでか――――――っっ!?


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