先生、スキ



確かあれは去年の冬のこと。



お金も男にも困ったことはなく
ただ気ままに過ごしていたある日。


久しぶりに電車で帰ろうという気になったんだ。


今考えればなんで電車で帰ろうなんて思ったんだろう。

それは分かんない、たぶん私の気まぐれ。



いつもタクシーで帰ってる私は
久しぶりに電車に乗った。


駅のホームで電車が来るのを待つ。


「はあ」


私がひとつ溜息をついたときだった。



「あれっ?斎藤?」



先生が声をかけてきたんだ。



でも先生だなんて気付かなかった。


というより、学校の先生の顔なんていちいち覚えていなかったのだ。




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