先生、スキ
きっと鬱陶しそうな顔をして
“俺、帰るから”とか言われるのかな?
ねえ、尚人。
私の気持ちに気づいてくれないですか?
その時だ、尚人は私を抱きしめた。
きつく、でも優しく。
驚きで言葉は出ない。
彼の顔を見ることもできない。
「・・・ちゃんと、こっち見て」
甘くて優しい、けど寂しそうな声。
尚人の瞳は悲しみで揺らいでいた。
なにより尚人の視線、私は“生徒”じゃなくて“女”になった。
「・・・俺さ、奥さんいるし
絶対浮気なんかしないって決めてたよ。
今でも一番大事だし、好きだし。
けど、俺、ほんと駄目な人間なんだ。
今、お前が欲しくてたまんない。
先生なのに、駄目な人間だよな。」
私は先生の瞳から冷たい涙が零れたのを見た。
たった一筋だけの冷たい涙。