カレの事情とカノジョの理想
蓮沼くんは胸の上に手を乗せると、わざと上下に動かした。
ビクッと身体が動いた私の反応を愉しむように、クスクスと笑う声が耳に響く。
「ホラ、みんな見てるよ?」
悔しい……完っ璧、遊ばれてる……っ。
周りからチラチラと注がれる視線を気にも留めずに、蓮沼くんは一向に私を離そうとしない。
こんな風に抱き締められて、ドキドキしちゃう自分が嫌……
……って違う!
このドキドキは、周りから見られてるせいなんだから……っ。
「美春ー? そろそろ呼んでくれないと、もっとスゴイことしちゃうよ?」
「……!」
もうこれ以上、周りから注目されたくない。
仕方なく、名前を呼ぼうと声を出しかけた、その時。
「っ……ヤ…」
「あれ? 何してんのーヤス?」
前方から、一言で表すと派手――な女の人が、私たちの前に向かってきた。
スタイルが良くて、それを誇示するような服装に身を包んだその女の人は、私の存在を無視するように、蓮沼くんに話しかけている。
誰……?