ドメスティック・エマージェンシー
「仮面は無理やけど。……俺がここに来た時、今使うとるパソコンが置かれてたんや。俺はもともと機械が苦手じゃなかってん、せやから復元させることも余裕で出来た。……復元して、開覧履歴を見ると、このサイトがあったんや」

ゼロは淡々と記憶を語った。
それが何だか嬉しくて、うんうん頷いて聞いていると「犬か」と笑われてしまった。

「なるほど。……けど、今も再登録して続けてるとは限らないんじゃない?」

「まあな。しかし、これしか手がかりがないんも事実。やからこれに縋るしかないんや」

それに、とゼロは言葉を続けた。
誰かに言いたくて言いたくて仕方なかったのかもしれない、とぼんやり思う。

「俺の双子が再登録したと思ってな、色んな奴が絡んでくれるんや。あいつ、ネット友達多すぎやろって最初思ったわ」

無邪気な笑みは、寂しさを浮かべた。

ゼロは親に捨てられ、孤独だったのだ。
なのに双子の……彼は、親にも友達にも愛されている。

親がいる私と、親がいないゼロ。
しかしどちらも寂しさを抱えて生きてきたようだ。






< 135 / 212 >

この作品をシェア

pagetop