ドメスティック・エマージェンシー
「だからかな、家のことは全て母さんに押し付けた。そのくせ、不倫してたんだ」

忌々しい思い出を噛み締めるように話すからか、私の心に重みが加わっていく。
どうしていいのか分からず、呟く。

「フリン……」

声に出してみるが現実味が湧かない。
なのに、耳の奥にこびりついた。

「そう。母さんは……どんどん疲れ切っちゃって。たぶん、愛もないのに家事だけをしていかなきゃならないこの先の人生に絶望したんだと思う。――死んだんだ」

息が止まった。
血が逆流する。
あまりにも、現実的だった。

愛されず、なのに役割だけを与えられる葵のお母さんの気持ちが、私に憑依する。

息苦しくなり、心があると言われる左胸を掴んだ。
深く呼吸を繰り返し、私の意志を戻していく。
心臓が規則正しい動きに戻った時、私はため息をついた。

「続けて」

葵は少し躊躇したあと、大きく頷いた。






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