若き店主と囚われの薔薇


「…おは、よう」


驚いて起き上がると、そこは奴隷達のテントで。

いつの間にか、湖から戻ってきていたようだ。

エルガに運んでもらったのだろう。

あのとき寝てしまったことを、申し訳なく感じた。


例のごとく、もう他の子供達は外へ出ていったらしい。

テントの中には、私とテンしかいなかった。


テンと外へ出ると、案の定エルガと子供達は先に来ていて。


「ロジンカちゃん、おはようー!」


エリーが、ぶんぶんと手を振ってくる。

他の子供達も、それぞれに明るく声をかけてくれた。

エルガを見ると、穏やかに笑っていて。

そこには、まるで家族のような、優しさと暖かさがあった。

それを感じて、私は。



私がいるべきは、ここではないと思った。



「…うん。おはよう」

子供達に挨拶を返して、私はエルガの方へ向き直る。

ひとつ頭を下げて、「昨日はごめんなさい」と言った。



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