たっぷりのカフェラテをあなたと
「僕は……全然完璧なんかじゃないんだ。普通の男なんだよ」

 その声が震えている気がして、私は思わず健吾さんを抱きしめていた。
 ぴたりと彼の背中にはりついた私に、彼は驚いている。

「……絵里ちゃん?」

 注意深く自分の心を探り、言葉を選びながらそれを口にする。

「私……健吾さんが好きよ」
「……」

 私の告白を、健吾さんは何も言わず黙って聞いている。

「愛してるとか……そういう深い部分はまだ分からないけど、少なくとも体を重ねるのは嫌じゃない」
「そう……」
「うん」

 健吾さんの来ているジャケットからは、ほんのり消毒の香りがする。
 彼が医者だというのを時々忘れるんだけど……こういう香りを嗅ぐと、”ああそういえば”って思い出す程度だ。

「健吾さんのキス……良かったよ」

 そう言うと、彼はくるりと体をこちらに向けてじっと私を見つめた。

「そう言ってもらえると救われるかな」

 優しくて品行方正な男性の見せた男の部分。
 
 当然と言えば当然で……健吾さんは私が浩介を思っている気持ちを大事にしようとしてくれていただけなのだ。

 やっぱり……彼が自分を”詐欺師”とまで言うほどひどい人だとは思えない。
 でも、健吾さんは私に言っていなかった”裏の自分”について語りだした。
< 51 / 57 >

この作品をシェア

pagetop