愛罪



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 霊園を出てバス停でバスを待っていると、祖母からの電話が鳴った。

 その内容は、うちに来ないかと言うもので。

 僕は迷うことなく頷いた。



 母親からの遺言である手紙を見つけたことは、ここへ来る途中のバスの中で祖母に打ち明けた。

 伝えるのを躊躇っていたわけではないけれど、何と伝えればいいのかと思案していたのは否めない。



 けれどいざ話しはじめると、意外にも祖母が落ち着いて僕の声を聞いてくれたこともあり、僕も平常心で話すことが出来た。

 祖母は、特に大きな反応を見せることはなく。



『やっぱりあの子が遺したものを探してたんだね。これからは、あなたはあなたのために生きなさい』



 そう言って、受話器の向こうで優しく笑んだ祖母の顔が脳裏に浮かんだ。



 今まで僕がしてきた行動全ては、間違っていなかったんだよと言ってくれた気がした。

 祖母に、母親のために生きている風に映っていたことは驚いたけれど、いい意味で僕が解放されたことを誰より喜び、そして称えてくれた。



 春の小川のように優しく、夏のひだまりのように暖かな祖母の声は、遠く離れた場所から崩れかけた積み木のような僕をそっと包み込んでくれた。



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