M i s t y


男が国際手配されている犯罪者だと知ったのは、2日ぶりに本部に顔を出し

犯罪者リストの検索の途中だった。



「見つかったようだね」



室長代理の穏やかな声が、頭の上から聞こえた。



「はい ですが……この資料は書き直しが必要かと思われます

右利きですが 左もかなり器用に使います 

身長はもう2センチほど高いでしょうか

それから……」







雄也が姿を消して半年が経っていた。

私は、彼がふいに目の前に現れるのではないかと思っていた。


『怪我が治ったら寝てくれるんだよな』


あの言葉は、いつか私に会いにくるという意味だったのではないのか。

そう思う一方で、顔を知られた私に接触などするはずもないと、 

自分に言い聞かせてもいた。

雄也が犯罪者でも凶悪犯でもいい。

もう一度会いたいと、何度願ったことか。

顔を見たさに犯罪者リストを呼び出しては、雄也の顔写真を見つめ続けた。

拘束された中で得た不思議な信頼関係は、愛情と呼ぶには不確かで、 

けれど、彼を追い求める心を否定できずにもがいた半年だった。
 


定時報告のために携帯を取り出した。

番号を押そうとしたときだった。

前からきた男性がよろけ、手にしていた紙コップの中のコーラがこぼれ

携帯を濡らした。



「ちょっとぉ どうしてくれるのよ」



男性がすみませんと、小さな声で何度も謝る。

更に文句を重ねようとしたときだった。

小さいが、ハッキリと聞き取れる声がした。



「澪 俺だ」



半年間追い求めた声だった。



「このまま俺を怒った振りをしろ ここでは監視カメラに写ってしまう 

気づかれないように右前の路地に入れ」



男を叱責した素振りを見せその場を立ち去り、用もない店に入り、 

そのあと足早に路地に身を滑り込ませた。

目深に帽子をかぶった男が立っていた。




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