GORIO-ゴリオ-
グランドからはラグビー部の威勢の良い掛け声が聞こえて来る。
練習も佳境に入っているのだろう。
ノーサイドと言う審判の声がグラウンドに響いた所で、ゴリオが口をひらいた。
『そんな事言う為にわざわざ俺に練習サボらせたのか?』
ゴリオの険しい顔つきがますます険しくなって来る。
夕日に照らされてゴリオの横顔の陰影が深くなった。
ラグビー部の練習に参加せずにゴリオが今ここにいるのは、私が大切な話があるからとゴリオにゴリ押ししたからだ。
ゴリオにとっては取るに足りない事でも、私にとっては何よりも大事で大切な事だ。
『俺と付き合いたいなら理由を言ってみろ』
詰問するように険しい顔でゴリオは聞いて来る。
だけど理由なんてそんなの決まっている。
『ゴリオの彼女になりたいからよ』
ゴリオの彼女になりたいからに決まっている。
ゴリオの隣に並んで居たいからに決まっている。
なのに…
『そうじゃない、俺と付き合いたいだなんて突然思いついた理由を聞いてんだよ』
突然思いついただなんて…そんな訳ないじゃない。
ずっとずっと考えていた事だ。
ゴリオに置いて行かれたくなくて、必死に追い付こうとしていた頃から考えていた。
必死に追いかけて私のガタイがどんどん良くなって行った頃から思っていた。
フサフサとした自分の毛深さに悩み出した頃から考えていた事なのだ。