Sales Contract
「勝也くん、そろそろ行く?」
「あ…わかった」
ソファから立ち上がった彼は、いつもより少しだけ凛々しいような気がした。
車に乗り込み、アクセルを踏む。
「千絵さんの車に乗るのって初めてだよね」
「あ…そういえばそうね」
考えてみたら、誰かを乗せて運転すること自体、ほとんどしたことがなかった。
「いつか俺が運転するね」
「勝也くん免許持ってるの?」
「ううん。
もし取れたらって話」
まだ当分先になりそうだなと思いつつ、ほほえんでしまった。
「うれしいけど、事故らないでよ」
「大丈夫、意外と運動神経いいから」
運動神経のよさで片付けられない気がするんだけど…
とは言わないことにしておこう。