河の流れは絶えず~和泉編~
「むこうの父はずいぶん悩んだみたいです。あたしのこともかわいいし、相手の方も気に入っていて、家に入ってくれるという。そこで、悩んだ挙句に父に頼み込んだんです。事の顛末を聞いて父はだいぶ怒ったようでした。」

浅草の賑わいとは対照的なこの話を、俺はいったい、どう受け止めたらいいんだ?

「あたしが大きくなってから兄が教えてくれました。自分の勝手で他所へ子供をやるなんて、親の考えることじゃない。子供は俺たち二人で立派に育ててやるから安心しろ。ただし、もう絶対にこの子には会いに来ないでほしい、そう父は条件をむこうの父につけたそうです。」

もうすでに、浅草の境内地に入っていて、足も疲れてきた頃だろう。

茶店に腰掛けて麦湯を二つ頼み、話を続けた。
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