Hurly-Burly 5 【完】
背筋を凍らせるあたしに伊織君が再度手を
差し出してきてギョッとした。
「し、仕舞え!」
身の危険を感じるのだよ!
背後から射るような恐ろしい視線を感じるのだ。
伊織君がヘラヘラ笑いながら手を引っ込めずあたしを
上から目線で見下ろした。
「堂々としてりゃいいじゃねーかよ。」
伊織君の言葉にビクッと肩を揺らした。
その言葉を間に受けたわけじゃない。
伊織君は・・・みんなは何一つ間違ってない。
何も悪いことしてないなら堂々とするべきだ。
その信念があるからこそ、みんなはいつだって
気にせずに立っているんだろう。
どんなに疑われる時でもその信念を曲げずに、
誇らしげに堂々としている。
「い、伊織君がエスコートしてくれるなら!」
あたしだって堂々としてたい。
目立ちたくはなかったけど、今だけは同じ
信念を持って分かり合えたらいいのに。
「仰せのままに」
伊織君のチャラけた声ではない感じに、
ふふっと笑みを零した。
「伊織君ってホストになるべきだよ。」
女の子の扱いをよく分かってる伊織君には
天職だと思うよ。
将来、ホストになるようだったら笑える。
「オメェーね、酷いじゃねーの。」
「伊織君のエスコートね、ちょっと
ドキドキするんだもん!」
色気を放たないで欲しいと祈るばかりだ。
「あんまり可愛いことばっか言うとあっちの
ピンク街に連れ込んじゃうぞ?」
「ぴ、ピンク街!?そんな街があったのか!!」
ビックリだよ。ピンク街なんて初めて聞いた。
道路も建物も空気も全部ピンクなんだろうか?
げへへっ、そんな街があるとは知らんかったぞ。
「・・・・・・純情ひよちゃ~ん」
伊織君に額をデコピンされてギョッとした。
こ、この人、いきなり何するのっ!
ぼ、暴力振るったぞ!!!