Hurly-Burly 5 【完】
何故か分からないけど理不尽にデコピンされて、
文句が大いにあるものの伊織君の目つきによって
言葉を飲み込んだ。
お、おいっ、あの背後にチラつく極悪サタンは何者っ!?
「っで、どこ行く予定だったの~よ?」
明らかに面倒臭そうな顔されると言いづらいんだが!
「あの、伊織君・・・さっきの人は?
予定あるならそちらを優先させるべきよ。」
さっきの人は一体どうしたんだっ!?
あんなに綺麗な人そうそう居ないと思うよ。
モデルと熱愛中だってことは口が裂けても語らんわ。
リークなんてしないから行っといで!
「ん~?さっき、別れた。」
「は、はいっ!?」
伊織君はシラッとしていて気にも止めてない。
歩を進める伊織君にどうしたものかと言葉を詰まらせる。
わ、別れたってただ帰ったってことよね?
「ひ、人は誰しもそうやって強くなるのさ!」
伊織君の肩をポンっと叩いた。
「何だよ?何か悟っちゃったみてーな顔しちゃってよ。」
伊織君の白けた目が・・・かなり痛い。
「伊織君ってさ、結構情に熱いタイプでしょ?」
この間じっくりと考えてみた。
慶詩が情に熱いってのは本人も認めてたから
分かってるつもりではいた。
他の5人だって互を認めて信頼が強く、結束している。
「ふーん」
興味なさそうにガラス窓に映る姿を見ながら、
足を止めずに歩いていく伊織君に手を引かれる
ようにというよりは引きずられてる。
「だから、伊織君は傷つきやすい女の子には
手を出さないってユウヤが言ってた。」
いつ聞いたか忘れてたけどな。
「それって違う視点で考えてみるとね、
伊織君が傷つきやすいのかなーんて思ったりして・・・」
伊織君の顔色を伺いながら言葉を呟くと、
「だったら、ひよちゃんが慰めてくれんのか~?」
甘い声を耳元に囁かれてバッと顔を上げた。
意地悪そうに笑う伊織君はやっぱりあたしよりも
上手でそんな簡単にはいかない。