Hurly-Burly 5 【完】
伊織君が傷つくなら何か言葉を見つけて、
少しでも心が晴れるようにしてあげるべき
だとは思うから何かあったら言ってくれればいいなとは思う。
「い、いいよ!やけ食いなり、ストレス発散に
バッティングでも、マラソンでも付き合ってあげてもいいよ。」
モカブラウンの髪に手を差し伸べて遠慮しつつ、
髪を撫でると伊織君が驚いた顔をした。
「・・・・襲っちゃうかもよ?」
「伊織君は嫌がるようなことはしないって信じてるから!」
「ほう?意外と、力づくで犯せるっても?」
「伊織君はそんなことしないよ。」
「言うねー。」
伊織君に試されてるような気がする。
「だって、伊織君優しいもん。」
クリスマス・イブイブの日だって、
あたしは確かに救われた。
人のことをよく見てるから敏感なのかもしれない。
伊織君は些細なことでもすぐに気づいちゃう人なんだと思う。
「俺は優しくねえーよ。」
ダークブラウンの瞳が揺らいだ。
坂道を下るとすぐに見つけた電気屋さん。
「ここに用事があるんですが?」
「おまっ、相変わらずだね~」
伊織君が電気屋さんを見て、ヘラヘラ笑って、
お供しますかーなんて言いながらあたしの
用事に付き合ってくれることになった。
ふむむっと商品の品質を比べながら、
彷徨い歩くあたしに付いて来ながら伊織君は
お店の若い奥さんに甘い言葉を囁く。
伊織君のフェロモンに女性客がほぼメロリン
してるのを見るとさすが色男なんて思いながら、
どっちが質のいい蛍光灯なのかしらと考える
時間を気にせず済みそうだった。
しかし、伊織君のあのフェロモンは底が尽きない。
ポイズンIoriの効果は発令中らしい。
その色気をあたしに少し頂戴よ!
あたしなんてちんちくりんで色気なんて
微塵もなくて色気よりも食い気の方が
膨大にあるような気がする。
ポイズンIoriを採取して調べるという
手があたしにはまだ残ってる!