Hurly-Burly 5 【完】
絶対に可笑しい距離感だろとか何を考えてる!?とか
言いたいことはたくさんあるけど飲み込んだ。
「・・・・・・っ!!!」
甘いりんごの匂いが鼻をつく。
額に何かが当たったような気がする。
伊織君の匂いが混じりあったその瞬間のことだった。
一瞬のように感じたそれが離れると耳元に甘く囁く
フェロモン魔導師の怒涛の攻撃に腰が抜けそうだった。
「ご名答、ご褒美どうだった?」
クワっと伊織君を睨みつけた。
ククっと喉を鳴らして笑う伊織君の頬をペチっと叩く。
「へ、変態っ!」
ううん、痴漢よ!わいせつ行為だわ!
これはれっきとしたわいせつ罪だ。
「あれー?ひよちゃん、今日は少し顔赤い?」
こ、このペテン師め!
い、今のあたし間抜けじゃないか!!
ヘラヘラ相変わらず何を考えてるのか分からない
笑みを零す伊織君にキッと睨む。
「あれ、日和ちゃん?」
道端を通る馨君が不思議そうな顔をして声を掛けてきた。
それに続いて馨君の後ろをバタバタ駆けてきたナル君が
真っ青な顔をして指を指す。
その後ろから馬鹿デカイ声で笑い転げるユウヤとそれを
ジーッと見てる京君もこちらの様子に視線を向けてきた。
そのまた後ろから慶詩の話を眠そうな目を擦りながら、
やって来たちぃ君が来て勢ぞろい。
目をパチクリしながら一旦妄想世界に戻る。
こ、この状況は一体何だ!?
一旦整理してみようと思う。
今、あたしは壁に背中を預けていて、
腰が抜けそうなあたしを伊織君が支えてる。
そうなったのはそもそも伊織君が額に・・・きっ・・キスして!?
そ、それで腰を抜かしそうにしてるわけで・・・
決してあたしは無実である!
「ほ、ほほっほほほほっ本日はお日柄も良くてですなー。」
完璧1人で焦るあたしに伊織君は笑いを堪えながら、
余裕をかましている。
な、何故、あたしが焦らねばならんのだ。
犯人は貴様なんだからな。
あたしが焦る必要なんてないじゃんか。
むしろ、堂々としてていいのよ!