王子様とビジネス乙女!
「君の言うとおりだった。
君は目立つのが嫌いみたいだから、一緒に行動して少し困らせてあげようと思ってね。
だって君、反省してないだろ?」
「しっ、シテマスヨ…?」
「目、泳いでる泳いでる」
ビジネスに精を出して何が悪い。
「まぁいいさ、写真販売はストップしたみたいだしね」
「ならもう、私から離れられてもいいのでは…」
「それはまだ早い」
「はい?」
「だって、まだ君から商業のことを何も教わってないじゃないか」
私はポカンと口をあける。
「あれ、本気だったんですか?」
「本気じゃ悪かったか?」
アホ面晒す私を面白そうに眺める王子様。
「あの、レナール様。
先日申し上げた通り、私がやってる商売は本当に大したものじゃないんです。
学生にできる程度の規模のもので、決してレナール様の勉強になるものでは…」
「それは私が決めることだろう?」
「いやまぁ、そうなんですが…」
この王子サマ、本当に商売なんぞに興味が?
ぬぐぐと頭を抱えていると、後ろから可憐な乙女の声が響いた。
「あら、レナール様?」
振り返った先には、薔薇の蕾を思わせるような令嬢が立っていた。
彼女の名前はナヴィーヤ・コッペリエッテ。
可憐で清楚、学園でも十本の指に入る美少女だ。
「レディ・ナヴィーヤ。
どうしたのかな、こんな所へ」
王子様にも名前を覚えられているとは流石である。
レディ・ナヴィーヤは花咲くような笑顔を浮かべた。
「噂には聞いておりましたけど…本当にその地味娘をお気に召しましたのね」
「あぁ。
彼女は真面目で優秀な素敵なレディだよ」
その言葉を聞いた途端、彼女の口元が歪んだ。
「素敵、ですって?」
薔薇の蕾が艶やかに花開く。
可憐な微笑みから打って変わって、ナヴィーヤ嬢は嗜虐的な笑みを口元に浮かべた。
「レナール様、その地味娘は貴方様に相応しくありませんわ。
ねぇ…アナタだって解ってるでしょう?」