王子様とビジネス乙女!


「わたくしが助けてあげようか?と言っても、この子ったら大丈夫気にするなの一点張りなんです。

だから…」

ナヴィーヤが荷物から計5冊のノートを取り出した。

「数日間あえて放置して、困ってきた頃に助けることにしたんです♪」

「わりと冷たいな…」

「すぐ手を差し伸べてもありがたみがないでしょう?」


そういうことを正直に喋るあたり結構素直ないい子なのだが、本人はこれで意地悪なつもりなのだった。


「べつにヴィーの力に頼らなくても…」

「強がりはやめなさいってば。

もうすぐテストでしょ?
知ってるわよ、ホントは困ってるの~」

仕方ない子だ。

ほんとに、その…ちょっとしか困ってないのに。

「わかった、借りとく。いくら?」

「んー、今なら特別5冊セットで30ベガにしといてあげる」

「期限は?」

「一週間ね」

「妥当なとこか。
金は今払うよ」

「うふふ、交渉成立ね」

「代金をとるんだな…」

珍種の野生動物でも発見したような顔でこちらを眺める王子様。

女の子の友情は無償だとでも思っているのだろうか。

「タダほど怖いものはありませんわ、殿下。

多少利害関係があった方が安心できますの。
ね、カドリちゃん」

そう言って微笑むご令嬢。

セリフこそ感じ悪いが、のほほんとマイペースなお嬢さんなのだ。

「そういえばレディ・ナヴィーヤ、君はカドリがどういう商売をしているのか知っているのかな?」

「ええ、よくお手伝いをしますもの。

でも、どうしてお訊きになりますの?」

実際手伝いというより片棒を担いでるといった風情だが。

「あぁ、実は嫌がらせついでに商業について学んでみたくてね。

私はあまり詳しくないから」

とんだ迷惑である。

「あら、レナール様は商業に興味がおありですの?

ならもっときちんとした商人についた方が…」

「いやね、正直に言うとこの子自身に少し興味があってね。

会ったことのなかったタイプだから」

「そのお気持ちはよくわかりましてよ!

でも…レナール様にはちょっとお勧めできませんわ」

「なぜかな?」

「それは…」

ナヴィーヤがこちらを見る。

自分で説明しろ、ということらしい。


< 16 / 20 >

この作品をシェア

pagetop