王子様とビジネス乙女!
「わたくしが助けてあげようか?と言っても、この子ったら大丈夫気にするなの一点張りなんです。
だから…」
ナヴィーヤが荷物から計5冊のノートを取り出した。
「数日間あえて放置して、困ってきた頃に助けることにしたんです♪」
「わりと冷たいな…」
「すぐ手を差し伸べてもありがたみがないでしょう?」
そういうことを正直に喋るあたり結構素直ないい子なのだが、本人はこれで意地悪なつもりなのだった。
「べつにヴィーの力に頼らなくても…」
「強がりはやめなさいってば。
もうすぐテストでしょ?
知ってるわよ、ホントは困ってるの~」
仕方ない子だ。
ほんとに、その…ちょっとしか困ってないのに。
「わかった、借りとく。いくら?」
「んー、今なら特別5冊セットで30ベガにしといてあげる」
「期限は?」
「一週間ね」
「妥当なとこか。
金は今払うよ」
「うふふ、交渉成立ね」
「代金をとるんだな…」
珍種の野生動物でも発見したような顔でこちらを眺める王子様。
女の子の友情は無償だとでも思っているのだろうか。
「タダほど怖いものはありませんわ、殿下。
多少利害関係があった方が安心できますの。
ね、カドリちゃん」
そう言って微笑むご令嬢。
セリフこそ感じ悪いが、のほほんとマイペースなお嬢さんなのだ。
「そういえばレディ・ナヴィーヤ、君はカドリがどういう商売をしているのか知っているのかな?」
「ええ、よくお手伝いをしますもの。
でも、どうしてお訊きになりますの?」
実際手伝いというより片棒を担いでるといった風情だが。
「あぁ、実は嫌がらせついでに商業について学んでみたくてね。
私はあまり詳しくないから」
とんだ迷惑である。
「あら、レナール様は商業に興味がおありですの?
ならもっときちんとした商人についた方が…」
「いやね、正直に言うとこの子自身に少し興味があってね。
会ったことのなかったタイプだから」
「そのお気持ちはよくわかりましてよ!
でも…レナール様にはちょっとお勧めできませんわ」
「なぜかな?」
「それは…」
ナヴィーヤがこちらを見る。
自分で説明しろ、ということらしい。