王子様とビジネス乙女!
「その、貴族階級での商売ではないんです」
「というと?」
「庶民と庶民の売り買いを仲介しているんです。
露天商を雇ったりですとか、本当に小規模なもので…。
私の商売をご紹介しようとすると自然と下町を練り歩くことになるので、そんな所に殿下をお連れできません」
大体いつもの所に王子様なんか連れて行ったら警戒されてしまう。
気さくで庶民的なオーナーというのが私のウリなのに。
「足を踏み入れたことは無いんだが、下町というのは不快な場所なのかい?」
「私にとっては居心地がよいですが、殿下にとっては見苦しい場所かと存じます」
「カドリ、それは私が決めることだ」
「いやでも」
「この国の王子として、一度くらい庶民の暮らしを見ておきたい。
次の休日、君の仕事に連れて行ってはくれないか?」
な、な、何を言ってるんだろうねこのボンボン様は!
もうやめて!
迷惑!疫病神!
「もう。
カドリちゃん、そこまで嫌そうな顔はさすがに失礼よ?」
ナヴィーヤは楽しそうに眺めている。
どうやら私を助けるのを諦めたらしい。
友達がいの無い奴め。
「…っ、わかりました、次の休日は仕事にお連れします!
ただしこちらからも3つほど条件を付けさせて下さい」
こうなったら条件を付けて無理だと解らせてやる。
「一つは、今後学内で私に話しかけないこと。
一つは、お忍びで来ていただくこと。
下町ではレナール様を王子様としては扱えません。
一つは、護衛を付けないでいただくこと。
高貴な身分とバレますから」
これが最大の譲歩だ。
これ以上は譲れない。
「構わない。
君の流儀に従うのは当然だし、護衛なんかなくても自分の身くらい護れるよ」
なぜ即答した。
そこはためらうとこだよ王子様!
「いやでも…言いづらいんですが、市民の皆さんが緊張してしまうので、私以上に身分の高い人間を連れて行きたくないんですよ。
なので、殿下には私の部下という設定で来ていただくことになりますが。
もちろん敬語もお遣いできません」
「いいだろう」
「え、いいんですか!?
私の弟分扱いですよ!?」
「構わないと言っている」
「そこまでして下町を見たいんですか!?」
「そこまでしないと見れないんだ」