『桜が咲くにはまだ早い三月』
もう明日になってしまうからと帰り支度をしていると、どこかで携帯が鳴り出した。
あ…
私と同じつまらないベル…
着メロならいつもの癖で、勝手に性格まで決めつけるのに。
誰の携帯だろうと振り返ると、電話に出たのは浩太だった。
意外だった。
だから、付き合う事にした。
着メロじゃなかったから。
それがアイツと私の一歩目。
「今出て来れない?
由香ちゃん、ちょっと待って。」
史彦は誰かを呼んでいる。
少しして
「由香…
春の移動で北海道に行くんだ。」
アイツだ。
失敗だ。
知らない番号には、やっぱり出なきゃ良かったんだ。