『桜が咲くにはまだ早い三月』
第三章 『着信』
携帯のベルはちょうど10回鳴って切れ、着信ありと表示された画面もすぐに消えた。
あと2回くらい鳴っていたら出たかもしれないのにと、また私のひねくれた性格が顔を出したけど、
どうせ
「ごめん」とか
「怒った?」とか
そんなセリフを言うに決まっているんだ。
さっきキスしたあの同じ唇で。
でも本当は追いかけて来ると思っていた。
ひとり足早に駅までの道を歩きながら、夢見る可愛げな女の子みたいに、浩太のあの長く綺麗な足で追いかけて来ると期待している自分に少し腹を立てながら、一度だけそっと振り返ってみたけど浩太の姿はどこにもなかった。
なによ。
送らせてって言ったは浩太のくせに。