あの夏よりも、遠いところへ

それが積み重ねてきた歴史の重みの違いなのだろうと、実感する。


「でも……本当に、愛しいって思ったの」

「愛しい?」

「一生懸命に私を求めてきてくれるひとを、抱きしめてあげたいって思ったんだよ」


あ、たぶん、一晩一緒に過ごした男のことだ。


「それは、好きってこと?」

「違う……と、思う」


雪ちゃんは優しいけど、時々こんなふうに、優しさの使い方を間違える。

博愛主義で、喧嘩が嫌い。もし雪ちゃんがうちのクラスにいたとして、片瀬がいじめられているのを目の当たりにしたら、怒るよりも泣いていたと思う。

誰かに頼まれごとをされたら断れない。好きじゃない男の子に好きだって言われると、泣きながら妹にどうしようって言ってくるような、そんな女。

なんとかしてほしいけど、それはもう彼女の性分なのだろうから、半分は諦めている。


「でも、それを陽斗が知ったらどう思うかな」

「……なにも思わないよ。だってもう、陽斗くんは私のこと」


好きじゃないから。最近、そればっかりじゃん。


「……分かった。じゃあ、伝えてくるね」

「え……」

「雪ちゃんは他の男と簡単に寝る女だったよ、別れて正解だったねって、言ってもいいでしょ?」


雪ちゃんの顔色が変わった。そして立ち上がったわたしの腕を、しっかりと掴んだ。
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