あの夏よりも、遠いところへ
 ◇◇

女の子を見つけた。生意気な目をした、きれいな子だなと思った。

すっかり空は暗くなり、公園で星を見上げようかなんて、ロマンチックな似合わないことを考えていたんだけど。ベンチには、先客がいた。


「……なに見とんねん」


関西人ってのは、やっぱりキツイ性格のひとが多いんだ。いきなり喧嘩腰で話しかけられるなんて思わなかった。しかもこんな美人に。


「べつに。隣、座ってもいい?」

「うん」


彼女は、化粧っ気がなく、長い髪は無造作に左側にまとめられていて、ルームウェアを着ている。こんな寝起きのような格好で、いったいなにをしているんだろう。

投げ出された細い腕と脚は、真っ白だ。


「標準語やな」

「え?」

「はじめて生で聞いた。標準語」

「へえ」


パキッとした声だ。はきはきしている、聞き取りやすいしゃべり方。男受けしそうな見た目なのに、意外だな。それとも、こういうギャップも良いのだろうか。

雪ちゃんも美人だけど、また違うタイプの美人。すごく努力している感じ。知らないけどさ。


「なあ、いくつ? スミレは16。高1やで」

「スミレ?」

「名前。スミレいうねん」


すごく似合う。紫の小さなかわいい花を思い出して、なんだかとても納得した。
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