あの夏よりも、遠いところへ
ぐうという間抜けな音が、ふいに響いた。静かな夜の公園にはあまりにミスマッチで、笑ってしまった。わたしじゃない。とすれば、スミレちゃんのお腹の音だろう。
「お腹すいてるの?」
「だってきのうの夜からなんも食べてへんねんもん。……財布、忘れてきてんか」
折れそうなほど細っこい身体が、なんだかとても心配になる。
「コンビニでおにぎり買う?」
「えっ……」
「いいよ。買ってあげる。食べないと倒れちゃうよ」
おにぎりなんて高いものでもないし。
彼女は嬉しそうに目を輝かせて、「うん」と一言答えた。なんだよ。かわいいじゃん。
近くのコンビニでおにぎりとお茶をふたつずつ買って、公園に戻り、一緒に食べた。
スミレちゃんはよくしゃべる子だ。いま付き合っているらしい彼氏の愚痴をひたすら聞かされて、ノイローゼになるかと思ったけど。
そんな彼女の口が、ふいに、止まった。
「……でもな、スミレ、どんな男と付き合うても、たぶん上手くいかへんと思う」
「どうして?」
「他に好きな人おんねん。小さいころからずっと、たぶん、死ぬまで片想いやろけど」
叶わない恋をしているひとって、意外と多いのかもしれないな。
両想いなのに上手くいかない雪ちゃんと陽斗もそうだし、わたしだってそう。そして清見のことも思い出した。彼はまだ、死んだ初恋のひとを想っているんだっけ。