あの夏よりも、遠いところへ
そのまま無言で公園を出たけれど、家には帰りたくなかった。どうしよう。陽斗のところにでも行こうか。
なんとなく電車に飛び乗り、なんとなく陽斗の部屋に向かった。それでも、彼はわたしの顔を見ると、右腕だけで抱き寄せてくれた。
「気分は?」
「史上最悪」
冷たい麦茶が美味しい。歯がキンと痛んだけど、一気に飲んでやった。
「飲む? お酒」
「飲むっ」
「あはは、荒れてんね」
お酒は飲んだことがない。高校生だし。興味すらなかった。陽斗もまだ未成年のくせに、悪いやつだ。
彼は慣れた手つきでお酒を淹れると、「ゆっくりな」と言って手渡してくれた。
なんだ、全然美味しくないや。大人って、やっぱり意味が分かんない。
「……ねえ、陽斗」
「なに?」
「雪ちゃんのこと、最初から好きだった?」
コップに一杯空ける頃には、すっかりわたしは出来上がっていた。弱いんだな、わたし。勝手に強いと思っていたけど。
彼は困ったような顔をした。この酔っ払いをどうやってなだめようっていう、そういう年上っぽい顔。さっき清見がスミレちゃんに向けたのと同じ顔。
清見のことなんて、考えたくもない。頭痛い。