あの夏よりも、遠いところへ

体調が優れない原因は分かっている。間違いなく二日酔い。陽斗が止めてくれなかったら、たぶん朝まで飲んでいたと思う。

お酒は別に美味しくない。それに翌日は、こんなふうにしんどい。いいこと無しじゃん。

いつか、あんなものを美味しいと思える日が来るんだろうか。大人になったら? 大人になるって、どういうことだろう。ハタチになったらってのは、社会的な話でしょ。もっと、違う。精神的なほう。


世界中のなにもかもを仕方ないと思えるようになったら、それは大人になっているということかな。

いま、絶対的に許せないものを、すべて許せるようになったら。
矛盾も、嘘も、不誠実も、全部「仕方ない」って思えるようになったら。

そんな日は本当に来るのだろうか。


――雪ちゃんと清見が寝たことも?



二日酔いの日に限って、プール開きだった。

太陽の光がきらきらと水面に反射して、まるでこの世のものではないみたい。プールサイドのベンチに座ってぼうっとそれを見ていると、強面の体育教師が、ぬっとわたしの顔を覗き込んできた。


「北野、つらかったら室内で休んどき? 顔色悪いで」

「大丈夫です」

「ほーか?」


もともと水泳の授業には極力出ないようにするつもりだった。きょうはたまたま本当に体調が悪いだけで。

苦手なんだ、プール。プールだけじゃないけど。泳ぐどころか、顔に水が掛かるのも、勘弁。
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