あの夏よりも、遠いところへ

きゃっきゃとはしゃいでいるクラスメートたちを見ながら、どうして男女混合で水泳の授業をやっているんだろうと思う。去年も思った。

けれどいまは、そんなことよりも、わたしと並んで見学をしている清見のほうが気になる。すごく元気そうだし、水泳も苦手じゃなさそうなのに。

プールの中の遠藤くんと楽しそうに会話しては、水を掛けられて怒り、そんな清見を先生が怒る。そんな感じ。

会話はもちろん無かった。ベンチの端と端。変な距離と空気がぎこちなくて、頭はずきずきと痛くなるばかり。


きのうのこと、訊きたい。雪ちゃんとのことじゃなくて、スミレちゃんのこと。あのあと大丈夫だった? って。

でも、このタイミングでそんなことを訊くのもどうかと思うし、だいいち、会話にならない気がする。だからやめておいた。


「北野さーんっ」


声を掛けてきたのは、ゴーグルが絶望的に似合わない片瀬だった。水の中から嬉しそうに手を振っている。

仕方なく彼女のほうに歩み寄ると、プール独特の香りがして、もっと頭が痛くなった。


「水、冷たくてめっちゃ気持ちええで」

「うん。ほんとだ」


しゃがみ込み、指先を少し入れてみる。たしかに冷たくて気持ちいい。気温が高いから、なおさら。もう7月になるんだなあ。
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