あの夏よりも、遠いところへ
「――ああっ」
目が覚めると、全身びっしょりだった。プールの水じゃない。自分の汗だと思う。
真っ白なベッド。真っ白な空間。ここが保健室だと認識するのに、そんなに時間はかからなかった。
「北野?」
「えっ……」
「大丈夫か?」
ベッドの傍らに座っているのは、きょう一度も目が合わなかったひと。清見蓮だ。彼は心配そうにわたしの瞳を覗き込んでいる。
「……わたし」
「プールにな、落ちそうになってんか。間一髪、手掴んで落ちへんかってんけど、北野、そのまま気絶しとってん」
「落ちてない……?」
「おう」
本当だ。たしかにどこも濡れていない。
「……清見が助けてくれたんだよね。ありがと」
「いや、でも結果的に気絶させてるしな」
それはわたしが情けないからで、清見は悪くない。
清見には、恥ずかしいところをたくさん見せてしまっているな。そういえば鼻血のときも、このひとが助けてくれたんだった。ちょうどそこの椅子に座ってさ。
アディダスのタオル、使ってくれているんだろうか。
時計を見ると、まだ体育の授業中だった。ずいぶん長い夢を見ていた気がするのに。なんだかタイムスリップした気分。