隣の彼の恋愛事情
突き出しとカリカリにあげた鶏皮をちらしたサラダをビールと共に口に運ぶ。


「お前やっと捕まった。俺から逃げるのあきらめたの?」

「こんなふうに連行されたら付いてくるしかないじゃないですか!」

唇を尖らせて言うと、ケラケラとアイツが笑った。

「だいぶいつものお前らしくなってきたな。」

焼かれた焼き鳥をお店の人から受け取りながらアイツが言った。

「うまいから、食え。」

そういって私の前にお皿を置いた。

お互いに一本ずつ焼き鳥を取って口に運んだ。

「おいしー!」

アイツに連行されて、どんな態度をとればいいか悩んでいたのに、美味しい焼き鳥を前にして私の意識は空腹を満たすことに集中していた。

「だろ?めいいっぱい食えよ。」

私の頭にぽんっと手を置いてアイツが言った。

食欲に向いていた意識が、アイツが触った場所に移った。

(忘れたいのに、忘れなきゃいけないのにこんなことされると嬉しい)

自分の中の矛盾に苦笑いが起きる。
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