隣の彼の恋愛事情
「おじゃまします」

そう言ってアイツの明けたドアの中に一歩踏み込む。

「突っ立ってないで、早く中に入れよ」

もたもたと靴を脱いでいる間に、私を追い越しアイツが突き当たりの扉を開けた。

「わぁ」

部屋の奥はきっとバルコニーだろう、大きなガラス窓の向こうには、三日月が綺麗に浮かんでいた。

部屋の中は私の住んでいたマンションとは比べ物にならないくらいの大きなキッチンと、広いリビングがあった。
キョロキョロと観察を続ける私を笑いながら、アイツは車と家の鍵をダイニングのテーブルに無造作に置くと、冷蔵庫からビールを2つだして、リビングのソファに移動した。
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