隣の彼の恋愛事情
はっと振り向くと、高そうなブランドスーツを着こなす男性の背中が。
そしてぶつかった相手の男性が、私の顔をみて一瞬表情を変えた。

(なに?私なにか変?)

男性はすぐに私から顔をそらす。

(ん?このマリンノートの香り。)

もう一度振り向くと男性の腰には赤いマニキュアの女性の手が巻きついている。

(いや~ん。お取り込み中邪魔しちゃった?)

私はおさわり男のことをすっかり忘れて意識をそのカップルに集中した。

「ねぇ~トーマったらぁ。」
女の甘ったるい声がする。

(ん?トーマ?それにこの香水の香り)

再度、カップルの方をみると、男の方が女を引き離そうとしている。
その時、顔をもう一度確認してみると

(え?いや……え?)

「三浦さん?」
私が声をかけると、その男性は”ビクッ”っとして、私から顔を隠すようにして

「どなたかと、お間違えではないですか?」
と言った。

「でも……声も香水も三浦さんです。」

私は彼の顔をなんとか確認しようと、目の前の赤いマニキュアの女性の存在なんかそっちのけで、私に顔を見せまいと必死の彼の周りをぐるぐると追いかけた。

(隠されるときになっちゃうんだよね~)

そして、動かぬ証拠を見つけた。

彼の左手の薬指にある星型のホクロを―――――。
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